定評あるOracleデータベースが企業に浸透し始めた当時、データベース管理者は一般的にテープやディスクへのバックアップを実行しており、前者が優先対象でした。市場のさまざまなテープおよびディスクメーカーをサポートするため、Oracleは、各メーカーが自社のテープ機器やディスク機器にフロントエンドを提供できるようにする、メディア管理レイヤーの概念を考案しました。メディア管理レイヤーは追加のみのバックアップストリームをサポートするよう設計され、レイヤーの主要構造は「バックアップセット」という概念でした。バックアップセットは、大まかに捉えるとバックアップファイル(データファイルアーカイブ済みREDOログ、コントロールファイル)の集まりであり、データベースバックアップはバックアップセットの集まりとして捉えられます。
バックアップセットを用いるバックアップは、ディスク機器やテープ機器との相互ストリームの並行実行が可能であるため、バックアップや復元を迅速に行えます。バックアップセットはフルと増分のいずれにも設定できますが、フルバックアップへの増分の適用には適切なタイミングが必要になるため、標準としては定期頻度(通常は毎週)でのフルバックアップの実行が一般的です。バックアップセットのもう1つのマイナス面は、バックアップセットは論理フォーマットであるためデータベースをマウントできないことです。
データベースが肥大化し始めるのに合わせて、フルバックアップの定期実行は困難になっていきました。ディスク速度は、データベース容量の増加ほどには改善されなかったからです。ペタバイト級のデータベースを抱える企業はすぐに、週次バックアップが1週間では終了しないことを悟りました。それに呼応してOracleは、イメージコピーバックアップという新たな概念、さらにIncremental Mergeという関連概念を考案しました。
イメージコピーはOracleデータベースファイルのバイト単位のバックアップで、ディスクにのみ保存可能です。イメージコピーの1つの利点は、データベースをイメージコピーに直接マウントできるため、開発テストワークフロー用クローニングなどの魅力的な応用例が可能となることです。すると次に、そうしたシナリオでの増分の管理方法に関する疑問が生じます。この疑問への対応策として、OracleはIncremental Merge技法を導入しました。データベースへの変更内容をイメージコピーに適用し、適用された変更が含まれた新しいイメージを作成する技法です。つまり、Incremental Mergeによるイメージコピーがあれば、組織として永久増分戦略を採用し、巨大なOracleデータベースの週次バックアップを不要化することができるのです。
ただし、Incremental Mergeの1つの欠点は巨大なデータベースファイルを並行して復元できないことで、さらに、バイト単位での同等性が求められるため、バックアップセットストリームに比べてイメージコピーの方がストレージ効率に劣る点もデメリットです。Incremental Mergeによるバックアップの実行時にはデータベースの全容量がバックアップされる一方で、バックアップストリームの場合には使用済みブロックのみがバックアップされるのです。最後に、Incremental MergeをOracleデータベース内のバックアップ中の大量のデータファイルに使用する際には、バックアップ対象への追加のメタデータ圧が発生します。これについては、バックアップされるファイル数の多さだけでなく、複数のバックアップ時点全体でファイルのメタデータの一貫性を保つ必要性もその要因です。
Rubrikでは、自社の名前を入れた新たなソリューションを考案しました。名称はRubrik Incremental Mergeで、バックアップセットとIncremental Mergeによるイメージコピーの両方の利点を組み合わせたものです。Rubrik Incremental Mergeは、増分マージによるイメージコピーのメリットをもたらすのみならず、単一の大容量データベースファイルの並行復元とバックアップ、さらに数千のファイルを含むデータベースのバックアップと復元の効率的なサポートを可能にする技術です。加えてRubrik Incremental Mergeは、各イメージコピーに必須のバイト単位の同等性をあきらめる必要のないストレージ効率性を備えています、さらに、Rubrik Incremental Mergeでは全バックアップにおける書き換え不可(イミュータブル)性が保証され、バックアップの従前コピーの変更は行われず、マージ済みバックアップのストレージが常に効率よく可視化されます。
Rubrik Incremental Mergeを視覚化したのが下図です。Oracleデータベースは、バックアップストリームを生成する、Oracle提供のRMANコンポーネントを使用してバックアップされます。そのバックアップストリームは、ファイル内とファイル間の両方の粒度での並行バックアップおよび復元など、多数の最適化機能を提供するインジェクションレイヤーに引き継がれます。続いてバックアップは、安全なThrift通信プロトコルでRubrik CDMクラスタへと転送されます。次にRubrik Oracle Snappableがバックアップの担当となり、重要なメタデータ管理を提供のうえ、整列ファイル集約フォーマット(AF2)レイヤーに送ります。AF2レイヤーは、多数のファイルのメタデータ圧に対処するだけでなく、分散型重複排除機能も備えています。最後にバックアップは、強力な書き換え不可(イミュータブル)性を保証し、ストレージをコンパクトに可視化する、マージ済みジャーナルファイル(MJFレイヤー)に回送されます。
Oracleなどの老舗ベンダーのデータベースのバックアップについてはもはや進展の余地がないとの考え方を覆す形で、Rubrikは革新的なソリューションを考案しました。Oracleが提供する各種データベース機能のサポート面だけでなく、日常の負担を軽減する主要指標の面からも、データベース管理者にクラス最高の体験をもたらすソリューションです。
ACO(高度クローニングオプション)などの機能が、復元プロセスでの複雑な手順を大幅に簡素化、自動化し、より迅速な復元と優れた体験を実現します。
AF2とセキュアなThriftを使用した性能強化により、少数の大容量データファイルと多数の小容量データファイルのいずれも、Oracleがサポート可能な最大限の規模で迅速にバックアップおよび復元が可能となります。
各企業がクラウドへと移行するなか、Rubrikでは、安全とレジリエンスの面で最先端を行く革新的なデータ保護ソリューションの開発に全力で取り組んでいます。